1.リサイクルの事業形態
リサイクル事業はある意味で鉱山(都市鉱山)と金属製錬の両方の事業であり,極めて安価な鉱石原料(廃棄物)を使って,再溶融するか,精製して純金属を作ることである。そのため,集荷,解体・分別には特別なコストが必要にはなるが,原料代が安いことで事業が成り立っている。事業規模が小さく,大型製錬所に比べてコスト競争力が無い場合でも事業化が可能である。そのため,小さなリサイクル業者が全国にあり,夫々事業が成り立っている。一般に,製錬費用は鉱石よりもリサイクル原料の方が高くつき,技術的に難しいことが多い。また,リサイクル方法として,再溶融の場合は溶融コストが安いため,後述の通り鉄やアルミニウムのように比較的安い金属もリサイクル可能である。
2.リサイクル方法
金属のリサイクル方法は2種類に大別される。金属スクラップを溶融して合金原料等にリサイクルする方法と製錬原料として製錬して純金属にリサイクルする方法である。
金属の種類によっては,製錬原料としてリサイクルできない金属がある。一般に,鉄,アルミニウム,マグネシウム,チタン等の金属はスクラップとして再溶解されるだけで,製錬原料として純金属にはリサイクルされない。技術的に純金属にはリサイクルできないのではなく,経済的にリサイクルできないということである。
工業的に製錬原料として純金属にリサイクルするためには,製錬原料としての価値よりリサイクルコストが小さいことが必要である。その点で,金,銀などの貴金属や銅を含有するスクラップはリサイクルに向いた典型的な原料である。貴金属や銅は原料の価値が高く,相対的に製錬費用が安いことから,比較的低濃度でも純金属にリサイクルされる。
一方,亜鉛の場合は原料の価値が低く,製錬費用が高いことから,図1に示す通り高濃度原料のみがリサイクル可能であり,低濃度原料は一般に廃棄物として埋立処分されている。低濃度でも結果的にリサイクルされている亜鉛は鋼板にめっきした亜鉛で,鋼板を電炉にてリサイクルする際に,亜鉛は揮発し,ダストになるため,電炉ダストから亜鉛のリサイクルが行われている。また,レアメタル,レアアース等の金属は,製錬方法が特殊で,リサイクルする製錬所が少ないことから,一部を除いてほとんど純金属にリサイクルされていないのが実状である。
3.リサイクル原料と廃棄物
廃棄物などに含まれる金属成分を経済的にリサイクルするには,含有濃度が極めて重要である。一般に金属価格が高く,製錬コストが小さい場合には,低濃度の金属でもリサイクル可能である。図1にリサイクル可能な原料中の推定含有濃度を示す。不純物元素等のリサイクル原料の性状によって,リサイクル可能な含有濃度は変動するため,境界濃度として表示し,リサイクル不可能な低濃度範囲を廃棄物として示した。金,白金,パラジウム及び銀などの貴金属元素は0.001~0.1%の低濃度でもリサイクル可能であるが,一般の金属元素は数十%以上の濃度の原料のみがリサイクル可能である。銅は10~20%以上の濃度であれば,リサイクル可能であるが,ニッケル,コバルト,鉛,亜鉛の順にリサイクル可能な濃度は上がり,亜鉛は40~50%以上の原料のみがリサイクルされている。
図1.リサイクル可能な原料濃度

4.リサイクルの経済原理
金属リサイクル事業の原料には,使用済み製品や製造会社で発生した部品屑,各種の滓類があり,有償あるいは逆有償で取引されているが,基本的に廃棄される物であり,廃棄物の取扱い業者が集荷することが多い。
鉱石製錬などの金属製造事業と比較して,リサイクル事業者は一般に事業規模が小さく,多くの事業者が参入しており,集荷競争が激しい。そのため,リサイクル原料を極力高値で購入することが必要となることから,経済的なリサイクルプロセスの構築が必要となる。また,使用済み製品からのリサイクル事業では,集荷,解体・分別,製錬,残渣の廃棄処分等の工程があるが,それぞれにコスト低減の工夫が不可欠である。
また,リサイクルによって回収される金属の価格は,リサイクルコストとは関係なく,地金市場の相場によって決まる。一方,リサイクル原料は一般に価格は変動が少なく,廃棄物のように逆有償の場合もある。従って,金属価格が上昇した時に,リサイクルする方が事業収益には有利であり,金属価格の変動を見定めて,リサイクル事業の運営をすることが重要である。工場内にリサイクル原料を在庫しておき,価格が上昇した時に地金にして販売することもリサイクル業者の有効な収益策となる。
リサイクル原料は製錬における低単価の鉱石ではあるが,鉱石とは異なり使用済み製品によって物性が大きく異なることから,リサイクル原料毎に最適な処理プロセスを構築する必要がある。尚,リサイクル方法として再溶融が最も経済的なリサイクル法ではあるが,含有濃度が高くないと再溶融は困難で,製錬する場合でも他の原料に混合できるような性状に加工することが必要である。
リサイクルによって高純度の金属製品を作ることは理想ではあるが,経済的な面では最適なリサイクルではない。高純度の金属製品は製錬所とのコスト競争となり,また供給責任や品質保証が必要となることから,リサイクルのコストアップ要因となる。低品質の金属地金を低コストで回収し,製錬所出の高純度地金と混合して処理するか,又は製錬の中間原料として製錬所に販売するのが,収益性が高いリサイクル方法となる。