タングステン製錬

タングステン概要

タングステン(Tungsten)は電子番号74,元素記号Wで示されるクロム族の金属元素である。原子量は183.84で,銀灰色で重く,比重は19.3と重く,金に近い。

タングステンの用途としては,高い融点と電気抵抗の大きさの物性を利用して,電球のフィラメントとして長年利用されている。また,鉄タングステン合金や炭化タングステンは硬度が高く,摩擦熱にも耐えるため,切削用工具などの超硬工具材料として使用されている。

タングステンの歴史

 1781年  スウェーデンのK・V・シェーレが灰重石から酸化タングステン(VI)の分離に成功し,タングステン酸と命名。

 1783年  スペインのF・ホセとエルヤル兄弟が,タングステン酸を木炭で還元して金属タングステンを製造し,ウォルフラムと命名したが,最終的にタングステンとなった。

 タングステン(Tungsten) は北欧の言葉で『重い石』という意味である。また,元素記号のWは鉄マンガン重石のドイツ語の 『Wolfram』 からきている。

タングステン資源

 タングステン資源の可採埋蔵量の59%は中国で,ロシア8%,ベトナム3%であるが,資源生産量は中国が80%に増加し,次いでベトナム6%,モンゴル2%となっている。

 タングステンの生産も中国が世界全体の82%を占める。

 日本国内へのタングステン原料の輸入は2018年に鉱石(ポルトガル,モンゴル)46t,APT(中国,ベトナム)1,057t,FeW (中国,ロシア) 850tとなっている。

 2010以前は中国からの輸入がほぼ100%であったが,尖閣列島問題などの政治問題によって,ベトナムからの輸入が増加している。

タングステン用途

 タングステンは高い融点と電気抵抗の大きさを活かし,長く電球のフィラメントとして利用されてきたが,最近LED普及により使用量は減少している。

      また,高い融点(3,422℃)を利用した用途として,電子顕微鏡や電子線描画装置の電子ビームの発生電極や,TIG溶接の非消耗電極,プラズマアーク溶接,プラズマ切断の電極にも使用される。

     その他,タングステンの用途として超硬工具の刃,耐熱鋼,電子機器部品,石油精製触媒等がある。鉄タングステン合金や炭化タングステンの硬度が高く,摩擦熱にも耐えるため,切削用工具などの超硬工具材料として使用されている。

タングステンの製錬プロセス

 タングステンの製錬では,鉄マンガン重石【(Fe, Mn)WO4】や灰重石 【CaWO4】をアルカリ浸出した後,アンモニアでパラタングステン酸アンモニウム(APT)を生成させる。更に,加熱して三酸化アンチモン(WO3)に酸化した後,水素で金属タングステンに還元してタングステンを製造する。

タングステンのリサイクルプロセス

 タングステンは超硬合金であるため,リサイクルでは粉砕法が重要事項である。欧州などでは低温高速衝撃粉砕法などで,無理やり粉砕しているが,粉砕効率が悪い。そのため,近年塩化第二鉄水溶液浸漬法,高温処理法及び亜鉛処理法などが開発され,タングステン合金の結晶粒界を膨張させて,砕き易くして粉砕する技術が開発され,利用されている。粉砕されたタングステン合金は水素で還元され,再生粉として再利用されている。