モリブデン製錬

モリブデン概要

モリブデン( molybdenum, Mo )は原子番号42の元素で、 クロム族元素の1つである。

モリブデンはレアメタルの1つで、鉄鋼用添加剤や加工素材として使われる金属で、非常に融点の高い金属であり、高融点金属に分類されている

モリブデンは銀白色の硬い金属(遷移金属)。常温、常圧で安定な結晶構造は体心立方構造(BCC)で、比重は10.28、融点は2,620℃ 、沸点は4,650 ℃。空気中では酸化被膜を作り内部が保護される。高温で酸素やハロゲンと反応する。アンモニア水には可溶。熱濃硫酸、硝酸、王水にも溶ける。原子価は2価から6価をとる。輝水鉛鉱(MoS2 など)に含まれる。資源としては、アメリカ合衆国で約30%、チリで約30%など、北南米で世界の過半を産出している。

高融点金属の中では比較的加工性が良いが、金属全般で見ると削りにくく加工がしにくい難削材に分類されている。モリブデンが添加された金属は、硬度や耐衝撃性が向上する。

モリブデンの歴史

モリブデンの名称は輝水鉛鉱(molybdenite)に由来するが、この名称はギリシャ語で鉛を意味する molybdos に由来する。モリブデン鉱物である輝水鉛鉱が鉛鉱物である方鉛鉱に似ていることから名づけられた。日本での「モリブデン」という名称は、元はドイツ語の Molybdän で、これが日本語になっている。

カール・ヴィルヘルム・シェーレが1778年に輝水鉛鉱を硝酸と反応させて分離した酸化物として発見し、「水鉛土 (wasserbleierde)」と命名。シェーレの友人ペーター・ヤコブ・イェルム (Peter Jacob Hjelm) が1781年に三酸化モリブデンを石炭で還元することにより単体分離し、現在の名称が付けられた。

モリブデン資源

写真1に,モリブデン鉱物写真を示す。

モリブデンは硫化鉱として様々な鉱物に含有されているが,モリブデンの資源生産に寄与する資源は主として銅の硫化鉱脈中に含有されていることが多い。そのため,モリブデンを含有する鉱石は銅精鉱を選鉱した後に,モリブデン精鉱を浮遊選鉱して回収している。

図1にモリブデンの可採埋蔵量を示す。モリブデンの埋蔵量は中国,ペルー,米国及びチリに多い。また,図2にモリブデンの資源生産量を示す。資源生産量も埋蔵量と同様に,中国,チリ,米国及びペルーに多いが,モリブデンは銅鉱物に随伴していることから,銅資源の挙動と類似している。

モリブデンの国・地域別生産量と消費量

モリブデンの国・地域別生産量を図3に,国・地域別消費量を図4にそれぞれ示す。生産量は中国,南米が多い。消費量は中国,欧州,米国に多い。

モリブデンの国内需給と価格推移

モリブデンの国内需給と価格推移 モリブデンの国内需給を表1に示す。また,モリブデンの価格推移を表2に示す。モリブデンの国内需要としてはモリブデン合金鋼が多い。また,モリブデン原料の国内価格としては20$/㎏,金属製品価格は100~200$/㎏程度で推移している。